インタビュー

千里 今日子

2025年3月 獣医学研究科博士課程修了

在学時の研究内容・選んだ理由

題名:北海道の乳牛群における潜在性ケトーシスの発生実態と早期予察ならびに予防に関する研究

乳牛は分娩前後に様々な疾病を発症しやすく、その基礎的病態の一つとして「ケトーシス」が知られています。特に、臨床症状を示さない潜在性ケトーシスは農場に大きな経済的損失をもたらす一方、北海道における発生実態や関連要因は十分に明らかにされていません。さらに、その前段階として分娩前の乾乳牛に着目し、低エネルギー状態にある牛の実態把握と早期予察・予防法の確立に関心を持ち、本テーマを選びました。

現在の勤務先と業務内容

勤務先:酪農学園大学

獣医学類ハードヘルス学ユニットにて講師を務めています。ハードヘルス学は国内の獣医系大学の中でも、本学のみに設置されている特徴的な分野です。農場で実際に起こっている問題を、個々の牛だけではなく牛群(herd:ハード)全体の健康状態や飼養環境など、多角的な視点から捉え、農場全体の生産性向上と疾病発生予防につなげることを目的としています。学生ともに農場を訪問し、飼養管理や疾病の発生状況などを調査・分析する教育および研究活動を行っています。

どのように研究内容を活かしているか

研究では、実際の農場でのサンプリング調査に加え、大学農場の試験牛を用いた詳細な実験を行いました。現場では実施が難しい肝臓組織中のmRNA量やルーメン内の揮発性脂肪酸濃度などを分析することで、代謝状態をより細部まで捉える経験を積みました。一方で、農場での調査を通じて牛群全体を見る視点も培いました。これらの経験を現在の業務に生かすとともに、乾乳後期の牛により焦点を当て、分娩後の疾病を未然に防ぐための具体的な予防対策に関する研究を進めています。

博士課程を目指している学生へのメッセージ

牛の臨床獣医師として日々の診療の中で疑問に感じていたことを、大学院生として様々な角度から捉え、じっくり考える時間を持つことができました。また、久しぶりに学生として授業を受け、様々な分野の先生方の講義を聞くことで、新たな視点や刺激を得ることができました。研究成果を論文としてまとめる過程は、自分の考えを整理し、それを他者に分かりやすく伝えるための訓練にもなったと感じています。博士課程では、日々の疑問に対して「なぜなのか」を深く掘り下げ、その答えを自ら明らかにできることが大きな強みだと思います。